伝統工芸の魅力「つづれ織」

日時 3/8(土)~10(月)
10:00~18:00
場所 中島屋呉服店
つづれ織の中でもひと目、ひと色、爪先で織り描いていく「爪掻本つづれ織」はとても手間がかかる最高級の織物。本会では、今の時代に合わせ、モダンでシンプルな色柄を中心に、控え目でさりげないおしゃれ心を感じさせる現代感覚の帯を制作する「京都 服部綴工房」さんの作品を展示販売いたします。
期間中は、織元3代目の服部紘樹さんをお招きし、制作秘話や作品について楽しくお話していただきます。また、帯におすすめのお着物をご用意しコーディネートもご提案いたします。
ぜひ、お気軽にお越しください。
■「つづれ織」の特徴と技法
つづれ織はたて糸の見えない平織といわれています。通常の織物よりたて糸本数が少なく、よこ糸をセットした杼(シャトル)の角度を高く、たて糸に対して45度くらいから織り込みます。すなわち、織り巾よりも長いよこ糸が、ピンと張ったたて糸をくるみ込むように織り込まれ、たて糸が隠れていき、それが厚みと強度を作りあげていきます。なめらかで張りのある地風が特徴で、非常に締め心地の良い帯となります。
図案に合わせ、模様の部分は糸をかえながら、地色(地糸)とほぼ並行に織り進めます。杼でたて糸をすくい爪先で糸をかき寄せ、その後打ち込みの強度が均一になるようにくしで織り込んで整えます。爪を使うのは細かい模様を織るための工夫から生まれたのかもしれません。よこ糸を織り返して必要な部分だけ織るため、柄の境目でたて糸にそって「はつり孔」と呼ばれる細いすき間ができます。
お話を伺ったのは、服部綴工房 織元3代目 服部紘樹さん。会社勤務の後、家業を継いで、主に図案、配色を担当しています。つづれ織にとって図案は非常に重要です。ここで作品に対する強い思いや細やかな工夫を作品とともに少しご紹介します。
■作品のご紹介
【彩錦 いろにしき】
斜め方向の色のぼかしが不規則に連続するこの柄。1箇所として同じ繰り返しはありません。
複雑なこの色彩表現は、大胆な糸染めの工夫と細やかな織りの調整によるものです。使っている色数は見た目ほど多くはありません。しかし、それぞれのグラデーションと、それが隣同士合うことで、複雑な色彩が生まれます。「色の混ざり」というものを強く意識して、このシリーズは制作します。この作品の色は青、焦げ茶、グレー。それぞれの色がそのまま見えるところもあれば、全て重なり合ってまったく違う色に見えるところも。実際に混ざり合っているわけではありません。色糸が1越ずつ並んでいるだけにも関わらず、人の目とはかくも不思議なものだと、これを作る度に実感します。同じものは二度と生まれないシリーズ。
【あさぼらけ光】
空の風景を表現しています。色の「ぼかし」を多用しています。地のグラデーションはもちろん、白で表されているシュッとした雲やぼやっとした光もぼかしです。それは、色と色との境目をぼかすということで、綴では割杢(わりもく)*というやり方で表現します。割杢は中間色を作る技法。つまり色の境目に中間の色を入れて、変化をなめらかにするということです。地のグラデーションは隣り合う色の濃淡と、色を並べる順番に気を使っています。なるべく自然で美しい色の変化になるように。柄部分のぼかしは、割杢で柄の縁を細かくぼかしていみます。ここは織り手さんの個性が出るところ。同じ図案でも人によって表現が違い、できあがりも異なってくるところが面白いところです。
地のグラデーションが一番目にとまるところかと思いますが、ここの5~6色の組合せで印象が変わっていきます。基本的にはお着物に合わせやすいマルチカラー的な配色が多いです。
*「割杢」とは・・・
色のぼかしを表す時、中間色を作る際に用いられる方法です。2本撚り合わさっている糸を1本ずつに分け、同じく別の糸のものと再び撚り合わせます。手作業で行います。
【花喰い鳥】
糸かせ(花喰い鳥の配色)
多くの配色に共通する意識としては、派手や華美になり過ぎず…ということです。この配色では、色のバランスを良くすることと、濃淡の段階をできる限り揃えることを考えました。
ここでは、一部の作品しかご紹介できませんが、他にも草木染め(紫根染め・本茜染め・紅葉染めなど)の糸を使用した作品、セミフォーマルからカジュアル向きの柄など、多数ございます。どうぞ、お手に取りゆっくりとご覧ください。